身体における内部感覚言語表現の神経基盤:学際的アプローチによる新知見
2026.09.25
研究期間・年度
2025年度
2025年4月 – 2026年3月
研究代表者
ジョン ヒョンジョン
国際文化研究科 教授
共同研究者
キム ヒョンスン
国際文化研究科
杉浦 元亮
加齢医学研究所 教授
研究キーワード
身体化されたメタファー ; 内受容感覚 ; 情動 ; fMRI ; MVPA
1. 研究概要
身体性理論によれば、言語の理解には、記述された行為や経験に関連する身体的・感覚運動的状態の部分的な再現が伴うとされる。この枠組みは原理的に、情動経験とその基盤となる身体状態、すなわち内臓に由来する身体状態にも拡張される。情動経験は本質的に身体に根ざしており、微細な身体感覚は言語によって豊かに表現されるにもかかわらず、言語を通じた内受容感覚の再現に関する神経科学的証拠は、外受容感覚や行為に関連するシミュレーションと比べて依然として乏しい。
研究1では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、情動経験を身体的に表す言語表現が、抽象的な情動語と神経レベルで異なるかを検討した。その結果、身体的表現(例:「心臓が押しつぶされるように感じた」)は、身体状態の表象に関わることが知られている前部島皮質および前部帯状皮質を賦活させることが明らかになった。重要なことに、同一の情動文脈が先行していたにもかかわらず、抽象的な情動語(例:「打ちのめされたと感じた」)ではこのようなパターンは認められなかった。これは、身体的な言語表現が、身体状態の再現に基づいて、抽象的な意味を超えた情動経験の身体的側面を伝えうることを示唆している。
研究2では、言語を通じて再現される身体表象の情報内容を検討している。再現された状態がその身体的起源の情報を保持しているならば、心臓および胃の内受容感覚から直接デコードされる情報構造は、身体的な言語表現にも汎化するはずである。本研究では、各試行の神経活動パターンをn次元ベクトル空間(nはボクセル数)上の特徴ベクトルとして表現し、線形サポートベクター分類器を用いて、心臓と胃の内受容感覚の試行を区別する最適な超平面を学習させる。さらに、同じ分類器を言語課題のデータに適用し、学習された境界が、心臓に関連する身体的表現と胃に関連する身体的表現の区別にも汎化するかを検証する。汎化が確認されれば、言語によって誘発される神経パターンが、直接的な内受容感覚と同じ、身体部位に固有の表象を保持していることが示される。本研究は現在進行中であり、予備的な結果は2026年9月までに公開予定である。
2. 研究成果の意義と今後の展望
本研究は、言語が情動経験の身体に根ざした側面を、抽象的なカテゴリーや強度のレベルを超えて、神経活動パターンからデコード可能な特定の身体状態のレベルで符号化し伝達するのか、またどのように伝達するのかを問うものである。本研究は言語科学、現象学、情動神経科学にまたがる学際的な意義をもち、外界からの情報に基づく経験を超えて、人間の経験の「感じられる」側面を言語がいかに伝えうるのかを解明する可能性を有している。
本研究は、身体状態の情報のうち「発生源の位置」、すなわち感覚が身体のどこから生じるかという一つの次元に焦点を当てている。これは扱いやすく理論的にも妥当な出発点であるが、身体的な情動経験を現象学的に区別する次元はこれだけではない。二つの恐怖の経験は、いずれも胸から生じながらも、一方は突然の締め付け、他方はゆっくりと押し寄せる圧倒的な寒気というように、その動的な質感や感じられ方によって大きく異なりうる。今後の発展研究では、感覚がどのように動き、高まり、時間とともに展開するかを反映する比喩表現と、その神経表象に焦点を当て、この次元を直接的に検討する予定である。
もう一つの有望な方向性は、この枠組みを大規模な言語間・文化間比較研究へと拡張することである。身体化された情動の概念化や言語表現には文化によって大きな違いがあるにもかかわらず、身体的言語に関する研究はこれまで主に英語を対象として行われてきた。類型論的・文化的に多様な言語コミュニティにおいて並行して脳画像研究を行うことで、身体状態の普遍的な性質と文化的に習得された概念化が、どのように協働して情動経験を形作るのかについて、より包括的な理解が得られると期待される。
3. 結語
「怒りがこみ上げる」のような身体的表現は、どのような知識を符号化しているのだろうか。本研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、情動経験を表す身体的表現によるコミュニケーションの内容を神経レベルで検討している。言語は豊かな主観的経験をそのまま完全に伝えることはできないが、個人の内的な経験を近似し、伝達し、他者と理解し合うための共有された記号体系を提供する。本研究では、従来の単変量解析と、脳内の多変量パターンを機械学習によって分類する手法を組み合わせ、日常言語における微細な表現が、情動の身体的経験を構成する身体状態をいかに伝えうるのかを検証している。