知識表現・機械学習・評価に基づく信頼できる人間中心AIの開発
2026.06.02
研究期間・年度
2025年度
2025年4月 – 2026年3月
研究代表者
ラチヤラク テイーラデチ
東北大学 総合知インフォマティクス研究センター 准教授
研究キーワード
信頼できるAI;人間中心AI;知識表現と推論;説明可能AI;大規模言語モデル

1. 研究概要
人工知能(AI)は、教育、医療、ソフトウェア工学、知識管理、意思決定支援など、さまざまな分野で活用されるようになっている。一方で、AIシステムが高性能化するほど、その出力が信頼できるか、説明可能であるか、また人間の利用者にとって有用であるかを検証することが重要になっている。本研究では、知識表現、機械学習、体系的評価を組み合わせることで、信頼できる人間中心AIの実現を目指した。
2025年4月から2026年3月までの研究期間において、本研究は複数の関連分野で成果を得た。第一に、大規模言語モデル(LLM)の信頼性評価に関する研究を進めた。特に、ソフトウェアテスティングの考え方を用いて、インコンテキスト学習の信頼性を評価する方法や、LLM出力の信頼性を検査するための手法を検討した。また、最先端LLMの時間推論能力に関する分析を行い、複雑な時間表現や複数の時間情報を含む課題において、現在のモデルが依然として困難を抱えていることを示した。
第二に、知識表現と推論に関する研究を進めた。知識グラフ埋め込み、オントロジー補完、記述論理、意味的類似度に関する研究を通して、AIシステムが構造化された知識をより正確に扱い、その推論過程を人間に理解しやすい形で説明するための基盤を構築した。
第三に、信頼できるAIの研究を実践的な応用領域へ展開した。医療分野では、軽量な医用画像セグメンテーションモデルに関する研究を行い、効率的なAI支援型画像解析に貢献した。教育分野では、AIリテラシーやChatGPT生成プログラムの検出・説明に関する研究を通じて、生成AI時代における責任ある学習環境の構築に貢献した。さらに、議論マイニングの分野では、ホテルレビューから仮定や反対意見を抽出する研究を行い、テキストに現れる人間の推論や意見構造の理解を支援した。
これらの成果は、信頼できるAIの実現には単なる精度向上だけでなく、構造化知識、慎重な評価、説明可能性、人間のニーズへの配慮が不可欠であることを示している。本研究は、多様な応用分野において信頼性が高く、解釈可能で、人間にとって有用なAIシステムの基盤形成に貢献した。
2. 研究成果の意義と今後の展望
本研究の成果は、AIシステムを実社会でより安全かつ責任ある形で利用するための基盤づくりに貢献するものである。特に、本研究の意義は、形式的な知識表現、機械学習、実践的評価を結び付けた点にある。現在のAIシステムは、自然で流暢な出力を生成できる一方で、その出力が正確であるか、一貫性があるか、信頼できる知識に基づいているかを明確に示せない場合がある。本研究は、このような課題に対して、知識に基づくAI評価と説明可能性の観点から取り組んだ。
学術的には、本研究はAIの信頼性評価、意味的推論、時間推論、知識ベースAIの改善に関する方法論と事例を提供した。実践的には、教育、医療、ソフトウェア工学、意思決定支援などの領域に応用可能な知見を得た。例えば、AI生成プログラムを検出・説明するための研究は、教育現場におけるAIリテラシーや学術的誠実性に関する議論を支援できる。また、医用画像セグメンテーションに関する研究は、医療関連AI応用の効率化に貢献する可能性がある。
さらに、本研究は、自然言語処理、ソフトウェア工学、医療AI、オントロジー工学、教育工学、議論マイニングなどの複数分野を横断する学際的な研究を推進した。このような学際的展開は、異なる知識や専門性を統合するというSo-Go-Chiの理念とも深く関わっている。
今後は、主に三つの方向で研究を発展させる予定である。第一に、LLMの信頼性、時間推論、説明可能性を評価するためのより体系的なベンチマークと評価方法を構築する。第二に、オントロジーや知識グラフなどの記号的知識と、学習ベースのAIモデルとの統合をさらに深める。第三に、教育、医療、意思決定支援などの応用分野において、専門家との連携を通じて実践的なAIシステムの開発と評価を進める。これらの取り組みにより、透明性、説明責任、人間中心性を備えたAIシステムの実現をさらに推進する。
3. 結語
本研究は、2025年4月から2026年3月にかけて、信頼できる人間中心AIの実現に向けた研究を推進した。主な成果は、大規模言語モデルの信頼性評価、知識グラフ推論、オントロジー補完、時間推論、医用画像解析、教育AI、議論マイニングなどに関するものである。本研究では、AIの高精度化だけでなく、説明可能性、構造化知識、体系的評価、人間のニーズへの配慮が重要であることを示した。知識表現、機械学習、評価を統合することで、教育、医療、ソフトウェア工学、意思決定支援などの分野で活用可能な、より信頼性が高く解釈可能なAIシステムの構築に貢献した。